さて。書くか。
今夜は排水管のはなし。
今日は長くなる。
Chapter 1 "Unknown Stuff"
先週は何気に忙しい一週間だった。
月曜日から疲れ果てて帰宅。
冷蔵庫のあるキッチンへ直行。
ここまではいつも通り。
ばってん、なんか臭うぞ。キッチンのシンクを覗く。
何やら茶色い悪臭を放つ物体が、広いシンクの中に浮上してきている。
とりあえず流そうとするわな。普通。
ばってん、流れん。いっちょん流れん。
驚異の臭いを含んだ水がシンクにたまっていくだけ。
この時点で既に1時を過ぎている。
何が起こった?
最近アメリカ人の真似をしてヒマワリの種を食っとるけど、
そのカスが詰まってしまったのかもしれん。
いろいろ考えを巡らせながらも、
とりあえずこの"くさい奴"をどうにかせんと寝れん。
トイレをチェックするとトイレや洗面台は流れることが判明。
さて、どうしたか?
もうこれしか残された道はない。
「一人バケツリレー。 from キッチン to トイレ。」
バケツなんかもっとるわけないけん、数か月前に行ったガレージセールで、
すごく感じのいいおばちゃんが売ってくれた大きな鍋を使用。
浅くなってきたら、いつもはビールのお供にしているコップに切り替え(泣)。
「なんでや~。」とか、「くっせぇ~。」とか、「くっそ~」とか
ぶつぶつ言いながら、ひたすら、奴をカーペットにこぼさんように往復。
最近、せっかく珍しく自炊しとるのになんてついてない。
ばってん、とりあえず貯まっている水はなんとかトイレにリレーできた。
ばってん、依然として流れるわけはないので臭いはとれていない。
ここまでくると俺にも意地がある。
シンクの下の排水管を見てみた。
プラスチック製でどうやら手で外せそうな感じだった。
嗅覚はもう半分麻痺しとるし、もうやるしかない!と気合いを入れ作業開始。
とりあえず、被害拡大を防ぐため、下に先の大鍋を敷いて、
上の2つのシンクから繋がっているU字管を外す。
外した瞬間に出てきた。奴が。
こんな夜中に俺に一人バケツリレーをさせた原因が出てきた。
これで修理できればこれまでの苦労も報われってもんだ。
てやんでぃ。
上機嫌でパイプを繋ぎ直す。
水を流す。
よし、完了。
パーフェクト!
といかんのが、おそらく、人生の面白いところで、依然として流れん。
そして依然として臭い。
Chapter 2 "Black White Knight"
もう一回、パイプの当たりを見渡す。
パイプの中はクリアーなはず。
そしたら、その上、シンクとパイプのつなぎ目か。
よく見るとシンクとパイプの間にコンセントに繋がった黒い電気機器があった。
なんやこれ?
と思い、古びたステッカーを読んだ。
どうやらシンクに流れてしまった野菜のカスを
細かく切り刻んで流してくれる電動のカッターらしい。
なんだ、こんな便利なやつがあるじゃん。
多分原因がヒマワリの種のカスなら、これで解決できるはず。
遂にやれる。救世主が現れた。
この黒い救世主の赤いスイッチを押す。
.......動かんばい。
コンセントを別の離れたところに繋ぎ直してリトライ。
........ダメ。
スイッチを強く押す。
....しばらくの沈黙の後、なんと動いた!!
ばってん、5~6回に1回しか動いてくれん。
プロ野球ならこれを助っ人とは呼べんだろう。
とりあえず押し続けた。水が流れるまで。
そしたら、突然、黒い救世主が熱を持ち、今度は火を噴いた。
炎上である。手のひらサイズの炎が出た。
これはビビった。
やってしもたと思った。
が、冷静に水をぶっかけ続けて熱が冷めるのを待った。
もう朝方。ここまで来るとお手上げだ。
明日も仕事がある。
シャワー浴びて、泥のように眠りについた。
パイプを外したまま....
Chapter 3 "Messy, again"
昨夜の激闘の余韻を残しながら、隣か上の人が水道を使う音で目を覚ました。
覚ました瞬間、やけに不吉な予感がした。
あんまり寝てねぇなとかも考える余裕なく、キッチンに走った。
とりあえず何も起こってない。セーフ。
と、思った瞬間だった。
戻ってきた。戻ってきやがった。戻って来んでいいのに。
昨夜よりもはるかに黒みを増した液状のものが、
今度はシンクではなく、外してしまったパイプからダイレクトに出てきた。
もうダメだ。
もう戦う力は残されていなかった。
幸い、アパートメントオフィスは同じ敷地内にあるのでヘルプを求めた。
屈強なおっちゃん達が部屋にやってきた。
"惨状"に顔をしかめながらも、"こんなの慣れとるわい"みたいな感じだった。
どうやら原因は俺のところではなく、排水のおおもとにあるらしく、
それが詰まっとるけん、一番下の階にある俺の部屋に逆流してくるらしい。
頼りになるおっちゃん達だ。
とりあえず修理が完了するまではキッチンば使わんどってくれと言われたが、
まぁそんくらい仕方ないし、洗面所が使えるしと思って、その日は大学に行った。
Chapter 4 "Big Hole Digged"
家に帰ってきた。
昨日よりは幾分臭いも取り除かれて少し安心。
ほんとにベッドしか置いてないベッドルームに行った。
驚くべきことが起こった。
目を疑うとはこんなことを言うのだろうと28年間生きてきて初めて思った。
ドリルが床に寝転がっとるばい。
砕いたアスファルトが山積みじゃないですか。
ベッドは丁寧にビニールでカバーされ、
その横には、
穴だ。
穴が掘ってある。
キッチンは特に変わった様子はないのに、
ベッドルームはさながら工事現場。
作業員のいない工事現場。
俺は何も聞いていない工事現場。
夜中やし、誰にも聞きようがない。
もうアメリカ来て半年以上経つし、滅多なことじゃ驚くこともなくなった。
ばってん、これは驚いた。
これは彼らにとっては普通なことなのかと。
とりあえず修理のためではあるし、誰に文句を言える時間帯でもないので、
パンツいっちょでその日はソファに寝た。
Chapter 5 "Good Mornig"
翌朝、7時半ぐらいだろうか、
俺が朝起きるよりも早くおっちゃんが部屋に入って来とった(笑)
ちょび髭の気さくなおっちゃんだ。
パンツいっちょでGood mornig。
まぁどちらにとってもGoodではないだろう...
とか思いながらも、おっちゃんとしばし談笑。
なんでも、キッチンのパイプはベッドルームに向かっており、
しかも結構な重症らしいので、穴を掘らんといかんかったし、しばらくかかるとのこと。
朝早くからめちゃくちゃ頑張っているおっちゃんを見て、文句は言えんかった。
むしろ、俺も頑張ろうとやる気が出た。
Good Morningだったのかもしれん。
続きはもうちょい続いていく.....
[Sade/By Your Side]
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